憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

***

相変わらず、きらきらと輝くエントランス。
インターホンを鳴らし、繋がったのを確認して二人でカメラを覗き込む。

「ひーさーしー君!遊びましょっ」

『……何の真似?』

ガチャリと通信は乱暴に切られたものの、ロックされていた自動ドアが開いたのを確認して中に入る。
エレベーターから出れば、そこには腕組みをした尚が小さく眉を寄せてあたし達を出迎えた。

「結衣は、もう実家に戻った?」

「今はまだ、あたしの家で寝てるよ。明日帰るとは言っていたけど。尚に会いたがってたよ」

「そう。まあいいや、入って」

なんともあっさりしたものだ。
千秋は、尚の結衣ちゃんに対する態度に不満があるようで、黙りこくったまま尚の背中を睨みつけている。

「どうぞ」

「あ、ありがとう」

尚は、涼しげな紺碧のグラスにグリーンティを注いで、ローテーブルに置いた。
ここまでバイクで熱風を切って走ってきたので、咽喉を落ちるそれは酷く心地良くて、思わず、ふうと息を漏らした。
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