憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
そのまま玄関に向かう尚の背を慌てて追う。尚は、エレベーターを待ちながら手早く携帯でどこかに連絡を入れる。結衣ちゃんの、ご両親にだろうか。
「はい、尚です。ご無沙汰しています」
喋る尚の声音は、自分の家族に対して話すにはあまりにも他人行儀だ。
「……すみません、わかりました。では」
ピッと、通話を切った尚の顔は怖いくらいに無表情で、その横顔からは一切の感情を窺い知ることは出来なかった。