憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
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豊かな緑に囲まれた、誠東大学病院はこの辺りで一番設備が整っている。
受付の看護師に部屋を聞いたあたし達は、結衣ちゃんのいる病室へと向かう途中、お母さんにあった。
「真知、あんた何処へ行ってたの!」
「ごめんなさい。結衣ちゃんは?」
「今は、眠ってるわ。結衣ちゃんのご両親が着てくれたから、お母さんは帰るわね」
そういって立ち去ろうとしたとき、お母さんがふと足を止めて振り返る。
真っ直ぐに尚を見つめて、微笑んだ。
「ずっと、尚君の名前を呼んでいたわよ。はやく会いに行ってあげてね」
「ご迷惑をお掛けして、申し訳ございません」
尚は、深く頭を下げる。その膝に置かれた両手が、ぎゅっと握られて小さく震えるのを見た。