憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「尚さん、貴方、もういいからさっさとこの場から出て行って頂戴。結衣なら、大丈夫だから」
「……わかりました。あの、結衣が起きたら」
「伝えることなんて何もないわ。あなたも、勝手に結衣に連絡をとるような真似はやめてくださいね。これ以上、身体の毒になるような刺激は与えて欲しくないの」
有無を言わさないその迫力に、千秋が小さく息を呑んだ。
「またね、結衣」
尚は、綺麗な顔をそっと歪めて呟いた。
その表情が、本心から生まれたものなのか、それともこの場を取り繕うための演技なのか、もはやあたしには分からなかった。
結衣ちゃんの、そして尚の父親が、そっと尚の背を押した。