憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「上辺だけの言葉を口にする人間を相手にするのは、もううんざりだ。ふたりといるのに、悪い気はしないよ」
呟かれた尚の言葉が胸を打つ。
"唯一与えられた場所"
以前、尚が子供の頃に住んでいたという家に連れて行かれたとき、美華さんが言っていた言葉が思い浮かんだ。
今、少しでもここを彼の居場所だと思ってくれているのだろうか。
偽らずに心を許せるような場所をつくってあげられていたら、尚の横顔を見ながら、そんなことを思っていた。