憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
まじまじと岡崎尚の顔を見るあたしに対して、不思議そうな顔をしてそっと首を傾げる。
「うん、……やっぱりイケメン!」
そんな仕草に、女豹紗雪先輩が小さく飛び跳ねる。どうやら、彼女のタイプにジャストミートしたらしい。
更夜先輩が呆れたように小さく溜息を吐く。
「紗雪、そろそろ次の授業始まるだろ」
「えー……、行きたくない。尚君を見てたい」
「お前、この単位落としたらやばいんじゃないのか」
「……うう」
その言葉に、ぐっと押し黙る紗雪先輩。
名残惜しそうに、ゆっくりと視線を岡崎尚へと向けた。
「それじゃ、またね!」
「はい。紗雪先輩、更夜先輩も」
そう言いながら笑みを浮かべた岡崎尚を前にして、紗雪先輩はその白い肌を真っ赤に染めて倒れそうになっていた。
去り際、「尚に手ぇ出したら、どうなるかわかってるんでしょうね」そう、耳元で囁かれた。
はいはい、出しませんよ。
そんなこと言われなくても、出しませんから。
上機嫌に手を振りながらホームを出て行く紗雪先輩とそんな彼女に知らん振りな更夜先輩。