憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「久し振り、真知。こないだはたくさん迷惑かけちゃってごめんね」
それだけ言って、ファミレスの店員を呼び止めてメロンクリームソーダを2つ注文する。しばらくして運ばれてきたそれを、無言であたしの前へと差し出した。
「……これ、お詫び」
「えっ!!いいよいいよ、そんな!さすがに高校生に奢らせるわけには…」
「これくらいいいでしょ。私の気が済まないから」
どうしよう、そう思いつつおそるおそるストローを吸えば、ソーダが咽喉でパチパチとはじけてとても心地良い。
そんなあたしの様子を、結衣ちゃんはただ黙って見つめ続けている。
―な、なんなんだろう……。
「ゆ、結衣ちゃん。話って何?」
結衣ちゃんは、同じようにストローに口をつけながら、茶色い瞳をパチパチと瞬かせてあたしを見た。
「私、夏が終わる頃に手術することになったの」
「……え?」
「命に関わるとか、そういうんじゃないよ。ただ、今みたいに薬で持たすよりも将来的に考えると体の負担が少ないんだって。ごめんね、ビタミン剤っていうのは嘘だった」
悪びれる様子もなく、にこりと笑った。