憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「それでね、その前に真知にお願いがあるんだ」
「何?あたしに出来ることなら、なんでも言って」
「ほんとうに、なんでもいいのね」
力強く言うあたしにを、結衣ちゃんはメロンソーダの入ったグラスをギュッと握り締めた。ツイと、雫が伝って彼女の指を濡らす。
「それじゃあ、尚を、私に譲ってくれないかな」
「ッごほ、けほ……」
驚きすぎて、気管にソーダが流れ込み盛大に咽てしまう。そんなあたしに結衣ちゃんは酷く呆れたような顔をした。
「もう、真知ってば、大丈夫?」
「だ、だって!結衣ちゃんが驚かすから」
「別に、驚かすつもりで言ったわけじゃないんだけど。私は本気だよ。尚にお願いすれば、きっとまた一緒にアメリカに来てくれるはずだし」
「……また?」
「去年、手術の検査入院で一年間アメリカに行っていたの。そのときはずっと、あたしの傍にいてくれた。お母さんには嫌な顔されてたけど、それでも……」