憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

   ***

ちらりと、腕時計を見る。
待ち合わせ時間ぴったりの13時。

遅刻しないでよかった。
なにせ昨夜はなんだか寝付けなくて、結局明け方まで眠ることが出来ずにいた。

「おはよ」

「おはよう、真知」

気温32度の猛暑で、突き抜けるような青空にはくっきりとした入道雲が浮かんでいる。8月も中旬で夏真っ盛りだ。
尚はそんな中でも、暑さを微塵も感じさせずに、涼しげな表情であたしにヘルメットを手渡した。

「随分急なお誘いで、驚いたわ」

「どうせ、真知のことだから家でゲームでもしながらごろごろするだけだろ?」

口角をクッと吊り上げながら、そんなことを言いやがりました。
結局図星で、言い訳できないのが辛い。

「どこ行くの?」

バイクに跨りつつ、問いかける。

「どこ行きたい?」

「……質問に質問で返さないでよ。誘ってきたの、尚じゃない」
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