憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
気づいた頃には、咽喉がからからになっていた。
食べ物も飲み物もすっかりなくなっていて、汗が幾筋も頬をすべり落ちていた。
「尚、ごめん。あたしばっかり喋って……」
「何が?楽しかったし。知らないことばかりだったから」
「……なら、よかったんだけど」
空と海の境に、薄っすらと橙色が滲み始めている。
―今何時だろう。
腕時計をちらりと見れば、いつの間にやら18時になろうとしていた。
なんてはやい。
「もっと、早く待ち合わせすればよかったね」
思わず呟いてしまった言葉に、驚いた。
だってこんなの、あたしがもっと尚と一緒にいたいと素直に伝えているようなものじゃないか。
「そうだね」
返って来た言葉に驚き、呆気にとられて尚をまじまじと見つめてしまう。
そんなあたしに、尚はくつくつと楽しそうに笑った。