憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
―邪魔、なの?
結衣ちゃんの真剣な想いも、今の尚にとってはただの障害でしかないの。
「……けれど、それももう終わりだよ。真知が気にすることじゃない」
それ以上、尚は何も話さなかった。
ただ一言「帰ろう」と言い、そっとあたしから距離をとるように肩を押した。
「尚」
緩やかなスピードでバイクを走らせる尚の背に、声を掛ける。
「尚がしようとしていること、1年や2年じゃ終わらないよね。ずっと、騙し続けていくの?嘘を吐いて、自分の心を誤魔化して苦しむの」
聞こえていないのか、聞こえない振りをしているのか、黙ったままの尚に、込み上げる涙をぐっと堪えた。