憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
リーン、リーン……――
吊るされた風鈴が、夏雲の下で涼しげな音を奏でる。
縁側に座り、かき氷をスプーンで掬いながらぼんやりとそれに聞き入っていた。
「……なあ、真知」
隣で同じようにかき氷を食べていた千秋は、ことりとまだ半分近く氷の残った硝子皿を置き、あたしの名前を呼んだ。
「何かあった?」
「何かって、何」
「分かっているくせに、誤魔化すなよ。ヒサと、何かあったんだろ」
ごくりと、馬鹿正直に咽喉がなった。
あたしの反応で、千秋はやっぱりなと肩を竦めて見せた。いつも鈍いくせに、気づいて欲しくないときばかり聡いのが千秋なのだ。