憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
数えてみれば、尚と最後に話をしてから今日でちょうど一週間が経っていた。勿論、わかっていたことだけれど尚からの連絡は一切ない。
ちらりと表情を窺えば、千秋はそれに気づいてにこりと微笑んだ。
思わず膝の上でぎゅっと掌を握り締めた。
「……俺には言えないこと?」
首を横に振って、俯いた。
あたしと尚は、安易な条件で結んだ契約上の、仮初めの関係だったけれど。あたしと千秋は幼馴染で、千秋と尚は親友だ(…そんなこといえば、尚がきっと照れ隠しに眉を潜めるのが容易に想像できておかしい)
言えないわけない。
むしろ、あたしはきちんと伝えなければならないのだ。
千秋を前に、堪えていたものが今にも崩壊しそうだった。
込み上げるものに咽喉がひくついた。苦しくて、情けなかった。結局あたしは、ただ目の前の悲しみに溺れそうになって幼馴染に縋りつく。
言葉の代わりに、頬を次々と涙が伝う。
「真知……」
「ごめんね、千秋」
謝っても謝りきれない。
あたしは、ずっと嘘をついていた。