憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「契約?嘘だろ。なんだよ、それ……」

千秋は、信じられないという声音で呟いた。
嘘じゃないと、小さく首を横に振った。枯れ果てたと思った涙は、しつこく目尻に浮かぶ。

何が、そんなに悲しいのだろう。
この一週間で、涙を流すたびにぼんやりとそんなことを思った。

尚との関係が終わったこと。千秋に嘘を吐いていたことへの罪悪感。結局は、そのどちらでもなかった。

「悔しいの……、すごく」

「……真知」

あたしは、また尚に守られた。
彼は自身が抱え続けている闇に、あたしを巻き込まないために引き離したのだ。こんな中途半端な状況で。

千秋は、黙ったまま何も言わない。
尚を心から信頼している幼馴染は、今一体どんな気持ちなのだろうか。

騙されたと、裏切られたと、そう思った?
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