憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
幼馴染だからって、もうこれ以上優し過ぎる千秋を振り回すのも沢山だ。
言い訳など、何も出来ない。
「ずっと、嘘をついていてごめんなさい」
ぐっと涙を拭って、頭を下げた。
どうして、さっきから千秋は何も言ってくれないんだろう。
怒って、騙していたなんて最低だと、罵倒してくれた方がよっぽどマシだ。ほんの何十秒の空白が、嫌になるくらいに長く感じた。
「……はあ……」
心底呆れたという声音で、長い長い溜息が落ちた。
そのすぐ後。
ごつんと、頭にもの凄い衝撃が走る。
「い、痛い!な、な、何してくれてんのよ!」
思わず千秋に怒鳴っていた。
すると、そこには心底不満であるという顔をした千秋がじっとあたしを睨みつけていた。
どきりと心臓が鳴る。
千秋は腕組みをしながら、わざとらしくもう一度溜息をついてみせた。