憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「……あはは、馬っ鹿じゃねーの」
千秋は笑うのだ。
もう、耐え切れないといった様子で。くつくつと笑いながら、その色素の薄い瞳からはらはらと涙を落とした。
「ち……、千秋……ごめ、」
「俺に謝ってどうすんだよ、この、馬鹿真知!」
ぺちんと、右頬を小さく叩かれた。
思わず手で押さえれば、千秋はかしかしと頭をかきながら「ごめん」と呟いた。
「なんであんたが謝るのよ!嘘ついてたんだよ!?付き合ってるって嘘ついて、ずっとずーっと騙してたの。罵倒でもなんでも、すればいいじゃん!」
「……そうしてやれば、真知は、楽になれるの?」
口元に笑みを浮かべながら、静かで、けれどどこか優しささえ帯びた声音であたしへと問いかけた。グッと咽喉の奥がつまり、あたしはそれに対して何も答えることが出来なかった。
「聞かない振りなんて、出来るわけねえだろ。ヒサと真知が、こんなに苦しんでるんだからさ。大体真知は、このままでいいわけ?だって、好きなんだろ。そりゃ、確かに、はじめは仕方なく付き合ってたのかもしれないけど。諦められるのかよ」
「なんで……、千秋がそんな心配してくれるの」