憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

  ***

「…と、いうことで」

ふたりで泣き腫らした瞼に冷たいタオルを乗せていれば、千秋が不意に口を開く。パッとタオルをとって、目元に赤味が残る瞳をぱしぱしと瞬かせながらあたしを覗き込んだ。

「真知は、どうするつもり?ヒサのことだから、どうせその後連絡とれてないんだろ?」

さすが、尚の親友を自称する千秋だ。
当然の如く、今のあたしが置かれる状況を理解しつつこてんと首を傾けた。ギュッとタオルを握り締めながら、小さく頷く。

意を決して、こちらから何度か連絡をしてみたものの、携帯は電源を入れていないのか一度だって繋がることはなかった。それどころか、夏季休暇中に行われたQSの集まりにでさえ顔を出さなかったのだ。

これまで、委員会を無断で欠席したことなど一度もなかった尚の不在には、更夜先輩や紗雪先輩も心配していた。
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