憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「だいすきだよ!」
千秋は、一瞬驚きに目を丸く見開いた後、心の底から嬉しさを滲ませてくしゃりと笑った。
「俺もだよ。真知も、ヒサも、だいすきだ」
自然と、笑みが浮かぶのが分かった。
言えなかった気持ちは、こんなにも、明るくあたしの口を出た。
千秋は合図するように右手を掲げ、ゆっくりと振った。
そのまま振り返ることなく、バイクに跨りその場を後にした。
ぎゅっと、服の上から心臓を押さえた。とくとくと、穏やかな鼓動。
世界をきらきらと輝かせ、時に酷く胸を痛めつけた感情という名のあたしの一部は、喪失の悲しみではなく、暖かな光だけを残して消えた。
ありがとう。
あなたを好きになって、本当によかった。