憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「尚のことが、好きだからに決まってるでしょ」

言ってしまった。
思わず、両手で口を塞ぐ。心臓の音が、耳に聞こえるくらいに高鳴る。その瞬間に、膝ががくがく揺れてその場で崩れ落ちそうになった。

「真知」

はしりと腕を引かれ、立たなくなった腰に尚の腕が巻きついた。

―ち、近い。
真上からこの近距離でも耐えうる綺麗な顔に見下ろされて、ほんとうに口から心臓が飛び出てしまいそうだ。尚の唇を奪って、人生で初めて告白をしたのだ。死にそうなくらいに、あたしは今、混乱をしている。

「……頭、大丈夫?真知が好きなのは、千秋でしょ」

あくまで冷静に、まるで諭すように尚は言った。
ぴくりと顔が引き攣る。ほんとう、どうしてくれよう、この男。人の一世一代の告白に対して、"頭大丈夫?"はないでしょう。いくらなんでも酷すぎる。
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