憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「信じてくれるまで、何回だって言うから。あたしは、尚が好きだ。契約が破棄されたって、そんなの知るか。この場所に来て、あたしが尚を好きだというのは、全部あたしが決めて、伝えたいと思ったことだから」
たとえ、尚が全てをデリートしたとしても、この気持ちだけは絶対に消させたりしない。
中途半端な覚悟で、ここまで来たわけじゃないんだから。
尚は、あたしを見下ろしながら、深く深く溜息をついた。少し傷つく。
人の告白に対して、この反応はいかがなものか。
「随分、物好きだね。真知も」
「ほんとだね」
「……けど、俺も人のこと言えないかも」
ゆっくりとソファに身体を落とされ、そっと尚を見上げた。
「えっと、何年、だっけ……」
「何が?」
「だから、何年、千秋を好きなの?」
「……15年」
「改めて聞くと、凄いね。ヴィンテージワイン並み」
尚は、その凛とした表情を緩めて微笑んだ。随分久し振りに思えたそれに、思わず見惚れた。
「じゃあ、残りは全部俺がもらう」