憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

ちゅ、と落とされた唇。
あまりにも一瞬のことで、一体全体、自分の身に何が起こったのか分からなかった。驚いて目を瞠る。

「……さっきから思ってたんだけど、目ぐらい瞑れば?」

「なんで、キスするの」

契約も破棄したのに。
キスの余韻を味わう暇もなく、不安と疑問で頭が埋め尽くされていく。

「俺だって、真知を好きだからじゃないの?」

「ええっ!?ていうか、なんでちょっと疑問なの!?」

「だって、俺も自分のことながら理解出来ないから。なんで、真知が好きなのか」

「よくわからないけど、なんか酷いこと言われている」

がっくりと肩を落とせば、尚はくつくつと笑いながらあたしを見る。
そっと頬に手を寄せた。いつも温度の低い尚の掌が、今は熱を帯びて随分熱かった。

なんだか、急に恥ずかしさに襲われて、顔を上げることが出来なくなった。真知、と呼ばれても頑なに首を横に振った。

「真知、ねえ……」

「……」

「……もういいから、そのまま聞いて」
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