憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

ゆるゆると尚を見上げる。
驚いたようにあたしを見ていた尚は、次の瞬間ふっと表情を緩めた。

「まるでプロポーズだ」

一瞬で、自分の顔が赤く染め上げられたのが分かる。
今更ながら、恥ずかしくて仕方がなくなるけれど、どれも本心だから今更否定なんて出来るはずもない。

「……そんなこというなら、きちんと返事をください」


きょとんと首を傾げた後、尚はゆっくりとあたしの手を取る。
そして――


「ありがとう。俺も、きみと一緒に幸せになりたい」


指先に触れるだけのキスが落とされた。
静かに、柔らかに、尚は微笑みを浮かべる。固く閉じていた蕾が、ふわりと花開くように笑う。

弾けるように涙が溢れた。

まったくどこまでも格好いい尚は、ずるい。
ずっと悩んでいたくせに、苦しんでいたくせに、それを微塵も感じさせないで、そんな風に返事をするなんて。
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