憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「真知」

どうしてだろう。尚に呼ばれると、それだけで平凡な自分の名前だって特別な響きを持つんだ。

尚、尚、尚。ねえ、あたしは。言葉にすることはこんなにも難しいのだっけ。溢れ出す感情に、ことばが追いつかない。しなやかな背中に、そっと腕を絡ませた。

「尚、だいすき」

精一杯の、愛の告白。
つたないそれに、尚が浮かべた一等綺麗な笑顔を。
あたしは一生忘れない。
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