憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「ふはっ」
珍しく、尚が小さく吹き出した。尚は画面に視線を落としながら、「千秋には話した?」そう聞いた。あたしがこくりと頷くのを見て、そっか、とそれだけを言って黙ってしまった。
「千秋は、やっぱり千秋だったよ」
「なにそれ」
「結局千秋は、尚のこと信じてるし、大好きだってこと」
尚は、驚きに目を丸くして、それが本当かと確かめるようにあたしを見た。戸惑っているようにも見える。
「……やっぱり、お人好しだな、千秋は」
吐き捨てるように言った尚の手を、ぎゅうと握りしめた。
「でも、だからそんな千秋が、尚も好きなんでしょ」
「気持ち悪いこと言わないでくれる」
「またまた~、図星なくせに」
思わずにやにやと笑みを浮かべれば、尚は不機嫌そうに眉をしかめてふいっと視線を空に投げた。
「……知ーー!」
「ん?」
遠くから、誰かの声がする。
「真知ー、ヒサー!!」