憂鬱なる王子に愛を捧ぐ


「ほらほら、泣かないでよ」

「泣いてねえ!」

真っ赤になって抗議する千秋の手をとった。

「ありがと、千秋」

「……別にいいよ、俺なんもしてないし」

「そんなわけないでしょ」

拗ねたように呟く千秋を引っ張って、あたし達はいつもと同じように三人で並んだ。ちらりと、千秋が送ってくれたメールをもう一度見る。

『\(^▽^)/』


顔文字ひとつで全力で喜びを表してくる千秋が、あまりにも千秋らしくてまたほころんでしてしまう。
同じ場所に三人でいられる。それがこんなにも特別なことだったなんて、あたしは今初めて気がついた。

< 509 / 533 >

この作品をシェア

pagetop