憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「ほらほら、泣かないでよ」
「泣いてねえ!」
真っ赤になって抗議する千秋の手をとった。
「ありがと、千秋」
「……別にいいよ、俺なんもしてないし」
「そんなわけないでしょ」
拗ねたように呟く千秋を引っ張って、あたし達はいつもと同じように三人で並んだ。ちらりと、千秋が送ってくれたメールをもう一度見る。
『\(^▽^)/』
顔文字ひとつで全力で喜びを表してくる千秋が、あまりにも千秋らしくてまたほころんでしてしまう。
同じ場所に三人でいられる。それがこんなにも特別なことだったなんて、あたしは今初めて気がついた。