憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

驚いてあたしは尚の顔を見つめる。

「すごい、間抜け面」

「うっさい!」

人の顔を見て笑う尚に眉を顰めて、ぎゅっと受け取ったレポートを握り締める。

「なな、なんで千秋のことを知ってるの?」

「なんでなんて、よく言えるよね」

呆れたようにそう言う尚に、あたしは意味がわからず首を傾げる。

「ちあきちあきって、あんたがずっと寝言で呼んでたくせに」

ボッ、と顔に血液が集中するのを感じる。間違いなく今、あたしの顔は茹でダコのように真っ赤なはずだ。

「起こそうとすれば、腕を回して迫ってくるし……、いい加減にしてよね。叩いたのは正当防衛だから」

やれやれと肩を竦める尚。

「まあ、それはそうと」

「はい?」

「はい、じゃないでしょ。頼みごと、聞いてくれるんだよね」

「……勿論です。なんでもします、いえ、なんでも命じてください尚様」

「物分かりの良い人間は嫌いじゃないよ」

尚はそう言ってニヤリと笑った。
何か、奢って差し上げたほうがいいよなあ、さすがに。
けれど、王子は普段、一体どんなものを召し上がるのでしょうか。
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