憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「ぅ、」
一瞬、苦しげな声を出して眉をよせたものの、すぐに気持ちのよさそうな寝息をたて始めた。
こんなアホづらを見させられちゃ、泣けるものも泣けないじゃないか。
あたし、失恋したのに。
百パーセント無意識にあたしを振った当の本人は気持ちよさそうに夢の世界に旅立っちゃってるし。
横にすわって、ぼんやりと千秋を見つめる。
初めて会ったその瞬間から、あたしの視線は自然と千秋を追っていた。それが、恋だと気づくのもそう遅くはなかったと思う。
それから15年間ずっと。
「……嘘……」
千秋との出会いからの年月を、指折り数えて、ふと我に帰る。
「ちょっと、え、そんな……」