憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
二人の間を俯きながらそっとすり抜けた。
慌てたように千秋があたしの肩を掴む。
「おい、どこ行くんだよ。後30分で会議始まるぞ?」
勢いで、パシンとその手を弾いてしまった。千秋は驚いたような顔で、あたしを見つめた。
その表情は、なんだか余計にあたしの心に傷をつけ、塩をすりこんだようにヒリヒリとした痛みをもたらすんだ。
直視出来なくなって、俯く。
「……具合悪いから帰るって言っといて」
「真知」
千秋の呼びかけに、もう返せる余裕などなくなって、振り返らずにホームを飛び出した。
桜並木を走る。
途中、QSのメンバーと何人かすれ違ったけれど、全部全部、気がつかない振りをした。
「っあ」
足が桜の根に引っかかり、勢いのままに薄桃色の花びらで出来た絨毯に倒れ込んだ。
ズサッという派手な音と共に、体に痛みが走る。
それで、誤魔化してしまいたい。
この胸の痛みを。
ほこりっぽい地面に、ぽたりぽたりと涙が落ちて円を描いた。