憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

涙は、とまることを知らない。
次から次へと頬を落ち、いったいどこで泣き止めばいいのか自分でもわからなくなった。息をするのさえつらい。

サク、と土を踏み締める音が背後に聞こえた。

「こんなところにいた」

「……ヒサシ」

「忘れ物だよ」

差し出されたのはあたしの鞄と、レポート。
それを見つつも手を伸ばさないでいれば、尚はじれったそうにうずくまっているあたしへと押し付けた。

「泣いてるの」

「……当たり前じゃない!」

カッとなって思わず手をあげるも、それは尚の手で拒まれてしまう。

「嘘つき。最低。ヤらしいことしないって言ったくせに」

「してないじゃないか」

「キスしたでしょ!」

「舌はいれてない」

尚はその瞳を細めてあたしを見つめる。
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