憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
半ば騙される形で、岡崎尚と契約を結んでから早2週間が過ぎようとしていた。
この14日間、あたしは針の筵に座らされている心地で、常に周囲を伺うだけで精一杯だった。
QSで言えば、まずは尚と付き合うことになったと報告した時点で、紗雪先輩から怒鳴られるは、喋ったこともないような女子達から常にひそひそと陰口を叩かれるはでゲンナリだ。
「真知、お茶」
あたしをこんな目に合わせた張本人は、ソファで本を読みながら暢気にそんなことを言う。
整った顔立ちにすらりとした体躯、表面上では愛想も良く、その口元にはいつも穏やかな笑みがうかべられている。
皆騙されてるんだ、この男に!
「……自分で淹れれば!」
意を決して反抗してみるものの、ぎろりと睨む切れ長の瞳に怖気づき、渋々と給水場へと向かうチキンなあたし。