憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「あんたの方こそ、どうなのよ最近」
あたしは千秋の分の紅茶を淹れながら聞く。
「どうってなにが」
「純子に決まってるじゃない」
言えば、千秋はほんのり顔を赤くして俯いた。
「千秋、好きな子でもいるの」
「ああ……、まあな」
ふうんと尚は相槌を打ちながら、千秋に気づかれないようにあたしへと視線をやって、ニヤリと笑う。
あまりの悔しさに、わなわなと体が震える。
「でも、よくわかんねえ」
「え!?」
驚いて声をあげるあたしに、千秋は不機嫌そうに眉を寄せた。
「なんでそんな嬉しそうなんだよ」
「う……、嬉しいわけないじゃん!驚いただけよ」
ごめんね千秋、素直に応援出来なくて。
心の中でそっと謝罪をする。
「純子、好きな男いるみたいなんだよなぁ……」
はあ、と溜息をつく千秋はとても弱弱しい。
そういえば、こんなに恋愛で落ち込む千秋を見るのはこの15年間で初めてだ。