憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「そんなに悩むくらい好きなんだ」
「……そうみたい。こんなこと、実は初めてだからさ。自分でもビックリ」
尚の言葉に、ツキリと胸が痛む。
どんなときだって陽気で、いつもどこかふわふわしている千秋は、困ったように笑いながら言った。
「あ、そうだ…、俺、渡された資料を提出しに行かなきゃならないんだった。そろそろ行くわ」
「随分慌ただしいね」
「あは、二人の邪魔するのもあれだしな」
ニヤニヤしながらそう言って、千秋はホームを出て行った。
扉が最後まで閉まったのを確認して、尚はまた偉そうにに足を組む。
「慌しい男だね、君の幼馴染も」
「まあね」
「椎名純子か……」
確認するように尚が呟く。
他人に無関心な尚がきちんと純子のフルネームを覚えていたことに内心、酷く驚いた。
「さすがの尚も、大学一の美人はチェック済みですか?」
茶化すようにそう言えば、パシンと景気よく頭を叩かれる。
「痛ったい!」
「あんたと一緒にしないでくれる?」