憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

ツンとそう言って、また何かを考えるように腕を組む。

「なによ、なんか問題でもあるの」

「……椎名純子は止めた方がいいかもしれないね」

尚は、抑揚もなくそう言い切った。

それにあたしは苛立ちを覚える。
だって、いくらなんでも大事な人が好きな相手をこうも簡単に否定されたらムカつくに決まっている。

「なによ、それ」

「別に。言葉の通り」

「適当なこと言わないで!まだ大学にきて2週間しか経っていなくて、よくそんなことが言えるわね」

憤っているあたしに対して、尚は冷たい瞳を向ける。

「短期間でもわかるものはわかる。真知こそ、普段何を見ているの」

「何をって……。目の前にあるものはちゃんと見てるわよ」

純子は、同じQSのメンバーだ。
可愛くて、優しくて、仕事もあたしの百倍出来て、皆に慕われる存在だ。教授からの信頼だって厚い。
千秋が惹かれるのも、悔しいけど、わかる。

あたしがそう呟けば、尚は小さく溜息をついた。
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