憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「もう、遅いよ」
「ごめんごめん」
地毛だという色素の薄い栗色の髪を揺らしながら多恵が謝った。頬に散らばるソバカスが、なんだか妙に彼女を愛らしく見せる。
「遅れるって連絡したじゃない」
そう呆れたように言うのが、美香だ。スレンダーボディにミニスカートから伸びるカモシカのような足は女の子の憧れだ。
とにもかくにも、目立つ3人組。
「じゃ、あたし達行くから」
純子が笑った。あたしは曖昧に頷いて、小さく手を振る。
2人は、物凄くつまらないものを見る目をあたしに向けて、ツンと反らす。手を振り返すこともなく背を向けた純子の横に傅いた。
「……感じ悪っ」
小さくなった彼女達の背中に向かって眉を寄せた。