憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
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「つ……疲れた。もう無理……」
「たく、だらしねぇな。真知は」
あたしたちは、QSが企画する次のイベントに向けての企画書作りに追われていた。
ノートパソコンに向かいっぱなしだった為に、凝り固まった肩をゴキゴキと鳴らしながら弱音を吐けば、すぐさま千秋の呆れ声が返ってきた。
黙々とキーを叩いていた尚も顔を上げる。
「大丈夫、真知。紅茶でも淹れようか」
「……結構よ」
「おい、真知!なんだその態度!!」
何も知らない千秋が、あたしを悪者にする。
尚は困ったように笑いながら、3つのカップに紅茶を注いだ。
「悪いな、ヒサ」
「なにがだよ」
千秋は他の人間同様、しっかりと尚の演技に騙されていた。
当たり障りのない笑みと物腰柔らかな態度に、すっかり絆されている。
『千秋にバレたらあんたと付き合うこと、絶対許さないだろ。あいつ真知の保護者だし』
そういってニヤリと口角を上げたあの邪悪な顔を見せてやりたい。
千秋は、いい感じに淹れられた紅茶に口をつける。