憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「……うまい!」
「ここの茶葉、美味しいんだよ」
「いや、ヒサの淹れ方がいいのかも……。いつも飲んでるやつと全然違う!凄い!!」
綺麗な琥珀色に、きらきらと目を輝かせる千秋。
そう、更に厄介なことに今まで唯一のあたしの味方でもあったこの幼馴染は、黒王子尚様のことを大層お気に入りなのだ。
こないだ、あたしの部屋に遊びに来た時もヒサはヒサは、で鬱陶しいったらなかった。
あんたが好きなのは純子でしょう。大体なんなの、ヒサって。いつの間にあだ名で呼ぶことになっているのよ。
「純子も紅茶好きなんだよな。今度淹れ方教えてくれよ」
「いいけど……」
純子、という単語に尚の眉が一瞬寄る。
それに小さく首を傾げた。こいつは要領よくその王子キャラを発揮して、QSでも確固たる地位をこの短期間で築きつつある。
けれど、どうにも純子のことだけは好かないようで。
あたしに対するような態度は取らないものの、愛想よく話したりする姿も見ないのだ。