憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
露骨に避けている訳ではない。
けれど、他人より少しは近くにいるあたしから見ればその不自然さがなんとなくわかった。
「あれ……USBメモリー、もう一個どこやったっけ」
キーの打ちすぎで腱鞘炎にでもなってしまいそうな手を止めて、千秋に聞く。
「ああ、予算系の纏めてあるやつ?お前、家に持って帰ってやってたじゃん」
「……」
「どうしたの、真知」
「最悪……、家のパソコンに差しっぱなしだ……」
「はぁ!?どうすんだよ、明日提出だぞ!」
千秋が驚いて声を上げるのに、何にも言い返すことが出来ない。
「いいよ。帰ってからやるから」
「お前いっつもエクセルの数式間違えるじゃん……」
そのとおりです。いつも、仕上がってから千秋や純子に確認してもらってようやく完成するあたしの仕事。
しょうがないやつ。ぼそりとそう言う尚は憎たらしいけど、まさにそのとおりすぎて項垂れる。
「しょうがねーな。今日、真知んちで一緒にやるか」
「ええ!?あたしんち?」
「いいじゃん、なあ、ヒサ」
同意を求める千秋に、こくりと頷く尚。
ま、まじで!?
「無理無理。あんた達みたいなでかい男が二人も入れるほど広くないし!」
「リビングでいいだろ、お前の為だ。このまま未完成だと、まじで紗雪先輩に殺されるぞ」