憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

「……ごめん」

「いーんだよ」


堪らずそう呟いたあたしの頭を、ぐしゃぐしゃと撫でながらニッと笑う千秋。千秋の優しさに、なんだか無償に泣きたくなった。尚もしょうがねえな、という顔をしていたものの、黙って千秋の横であたしを見つめる。

「どうせ家行くなら、もう帰ろうぜ」

「そうだね。真知、そこのUSBメモリー抜き忘れないでね」

「……はいはい、申し訳ございませんね」


あたしたちは三人でホームを出る。
QSの仕事量は半端ないくせに、あたし達の学年はたったの7人しかいない。少数精鋭だ、と更夜先輩は言っていたけれど、結局の所はミーハーな女子達を入れさせない為らしい。

千秋や更夜先輩、そして尚は、このキャンパスで女子を中心に人気を誇っているからだ。

くだらない話をしながら、駐輪場へと繋がる桜並木を歩くその先。
少し離れた大きな桜の木の下に、見知った後姿を見つけた。
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