憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「…千秋……」
「流石に、邪魔出来ないしな。遠回りだけど北門から回ろう」
ニコッと笑って千秋はそういった。
尚に視線を向ければ、尚もどこか納得いかない表情でいる。
「千秋、良いの」
「なにがだよ、ヒサ」
他人なんて興味無い、なんていつも言ってのける尚に珍しく、そんな問いを千秋にかける。
それに笑って誤魔化す千秋。
純子がモテるなんて周知の事実だけど、それを目の当たりにすればそりゃちょっとは気になるはずなのに。
あんたみたいな大根役者が、無理に笑って見せるのがなんだか辛い。
「付き合ってくれるだろ」
「何によ」
口を尖らせて千秋は拗ねる。
これだよ、これ、と何やらジョッキを傾けるジェスチャーをした。
ああ、ヤケ酒ね。
それを見た尚は、どこか憂鬱そうな表情をして、小さく溜息をついた。
まあしょうがない。
こうなったら、書類は帰ってから徹夜で仕上げればいいや。