憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「おーい、千秋君やい」
「……寝てる」
尚が、軽く睨みながら箸で千秋の頬をつついた。
「もう!あんたの為の飲み会なんだけど」
ヤケ酒、なんて酒の弱い千秋にとっては酷な話だけど、結局こいつが飲んだのはビール二杯。全く面白くない。
「すみません、生一つ」
「はい、よろこんで!」
居酒屋なんていかなそうな岡崎尚が、何杯目かわからないビールを注文している。美味しそうに口をつける尚をまじまじと見てしまう。
「なに」
「いや、結構イケルくちだなーと思って」
そう言えば、尚はフッと笑って千秋を見た。
「千秋が弱すぎるんじゃないの」
「あはは、それは言えてる」
睫毛長いなぁ…。
尚の切れ長の目を縁取る長い睫毛は、とても綺麗。
アルコールのせいでほんのり赤く染まる頬はなんだかとてもセクシーだ。
女のあたしが言うのもなんだけど、女がさりげない男の仕草とか雰囲気にドキっとしちゃうのはこういう時なんだろうな。
「ねえ、」
「何」
「なんで、純子のことを嫌いなの?」
あたしは酔いの勢いでそう聞く。
ずっと疑問だったことだ。