憂鬱なる王子に愛を捧ぐ

酷く冷たい声音に、あたしは何も言えず言葉に詰まってしまった。
当の本人は、まるでどうでもいいことのようで、それまで同様に静かに箸を動かしている。


「あんたが考えることが、本当にわからないわ」

「それは光栄だね」

「(…このヤロウ)いい?純子だよ!?いくらあんたが王子だってね、今みたいなこと聞かれたら大学中の男を敵にまわすんだから」

「知ってるよ、しつこいな」


尚は、いい加減うんざりといった様子で肩を竦めた。

理解出来ない。
あんなに美人なパーフェクトガールだってのに。

もしかしてこいつ、ツンデレ属性?なんて馬鹿なことを考えていたら案の定、顔に出ていたらしく、おしぼりを投げつけられた。


「好きな子には、意地悪したくなっちゃうタイプなんじゃないの?」


ニヤニヤしながら聞けば、尚は不機嫌そうに眉を顰めた。

お、図星か。


「それは真知でしょ」


ぐ、500のダメージ。


「そんなんじゃ、千秋に気持ちが届くのはずっと先だね」


ふふんと笑って言う尚に、内心ハラワタが煮えくり返りそうになるのを必死で堪える。このままじゃ、近い将来、絶対ストレスにより急性胃腸炎とかで倒れるに違いない。


「すぐよ、すぐ!そんで、あんたの彼女役なんてすぐに辞めてやるんだから」


怒鳴りつけるように言った言葉に、どうせ嫌味の一つでもすぐに返してくるのかと思ったら、尚にその様子は見られない。


「…どうしたのよ」


ふと前を見れば、千秋が小さく身じろぎをしている。
< 90 / 533 >

この作品をシェア

pagetop