憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
酷く冷たい声音に、あたしは何も言えず言葉に詰まってしまった。
当の本人は、まるでどうでもいいことのようで、それまで同様に静かに箸を動かしている。
「あんたが考えることが、本当にわからないわ」
「それは光栄だね」
「(…このヤロウ)いい?純子だよ!?いくらあんたが王子だってね、今みたいなこと聞かれたら大学中の男を敵にまわすんだから」
「知ってるよ、しつこいな」
尚は、いい加減うんざりといった様子で肩を竦めた。
理解出来ない。
あんなに美人なパーフェクトガールだってのに。
もしかしてこいつ、ツンデレ属性?なんて馬鹿なことを考えていたら案の定、顔に出ていたらしく、おしぼりを投げつけられた。
「好きな子には、意地悪したくなっちゃうタイプなんじゃないの?」
ニヤニヤしながら聞けば、尚は不機嫌そうに眉を顰めた。
お、図星か。
「それは真知でしょ」
ぐ、500のダメージ。
「そんなんじゃ、千秋に気持ちが届くのはずっと先だね」
ふふんと笑って言う尚に、内心ハラワタが煮えくり返りそうになるのを必死で堪える。このままじゃ、近い将来、絶対ストレスにより急性胃腸炎とかで倒れるに違いない。
「すぐよ、すぐ!そんで、あんたの彼女役なんてすぐに辞めてやるんだから」
怒鳴りつけるように言った言葉に、どうせ嫌味の一つでもすぐに返してくるのかと思ったら、尚にその様子は見られない。
「…どうしたのよ」
ふと前を見れば、千秋が小さく身じろぎをしている。