憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
結局、家についた頃には深夜0時をまわっていた。
千秋家のチャイムを鳴らすにはあまりに遅い時間だったから、仕方なく自宅へと千秋を連れて入る。鍵を開けて恐る恐る入れば、既に両親は寝静まっていて、そろそろと忍び足で自分の部屋へと入った。
人の苦労を知らない千秋だけが、すやすやと夢の中だ。
「狭い部屋」
「うっさいわ!」
入った瞬間、ぐるりと部屋を見渡した尚が正直に呟くのに、思わず声を上げた。尚は、担いでいた千秋をあたしのベッドへと下ろす。
「お疲れ、尚」
「ほんとだよ。幼馴染の躾くらい真知がやってよね」
「昔っから酒に弱いのよね、千秋は……」
スヤスヤと眠る千秋の顔を見ながら、尚が溜息をついた。
それでもなんだかんだで、王子は千秋を助けてくれるのだからありがたい。
「……ちょ、真知……、まだ飲むの?」
無意識に缶ビールを開けようとしていたあたしに、尚が突っ込む。
うわ、ツッコミはあたしの専売特許だったのに。
「なんか喉渇いちゃって尚も飲む?」
ミニ冷蔵庫からとりだして、返事を聞く前に尚に手渡した。