憂鬱なる王子に愛を捧ぐ
「真知、USBメモリーどこ?千秋は無理だし、今からやるよ、仕事」
ああ、あたし、結構酔ってる。
家について、必死に張っていた気持ちが緩んだせいで、一気にアルコールがまわったんだ。
「ここだよ」
指差す手が、小刻みに震えている。
当然ながら、尚はその震えに気づいた。
「ちょっと、手、震えてるけど」
「大丈夫だよ、ちょっと酔っただけ」
尚は、USBメモリーを自分のパソコンに差込んで、起動させる。
それをただ、ぼんやりと見つめていた。
パソコンの光の中の数字がぶれて見える。
ああ、やばい。
でもここで尚一人に仕事を任せる訳にはいかない、となんとかあたしも自分のパソコンを開いた。
こんなことになったのは、そもそもあたしの所為なのだ。
カチカチと静かな音が随分と遠くに聞こえる。
ぐるぐると、頭の中が揺れる。思った以上に、酔いが回っていたことに、こんなになるまで気づかないとは、不覚だ。
「真知?」