大人的恋愛事情
もうその手には乗らない。
今はそんな気になってるだけ。
どうせまた私と付き合い始めたら、他に目がいくに決まってる。
新鮮さもなにもない私と付き合っても、圭にとって面白いわけでもないんだから。
「そうか……」
落ち込む声を隠しもせずそんなことを言う圭に、少し胸が痛んだりするのは気のせいよ。
何年も付き合ってきたから、情のようなものがあるだけで……。
「藤井さんと寝たの」
思わずそんなことを口走るのは、自分の心が揺らがないように。
圭に揺れないように、圭を遠ざけたいがため。
「寝た?」