大人的恋愛事情
 
確かに重ねてきた時間は、家族の次に多くて。



そんな圭のことなら、なんだって知ってるのと同時に知られていて。



運ばれてくる久しぶりに食べる餡かけそばは、相変わらず美味しかった。



店を出てコートの前を掻き合わせると、ふと圭が私に手を伸ばしてくる。



マフラー代わりに巻いたストールに少し絡まる髪を直す。



「繭?」



そう呼ばれても無視して歩き出す私に、圭が困ったように笑う。



「なんで怒ってんだよ」



「別に……」



「怒るなよ、な?」



一度慣れ親しんだ相手には、一年のブランクなどたいした事でもないらしく。
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