大人的恋愛事情
 
「先に戻って」



「いいだろ別に」



「いつもそうしてたでしょ?」



「……じゃあ先行けよ」



そう言う圭が、歩道のガードレールに凭れるように腰を下ろす。



「また食いに来ような?」



なんの違和感もなく言って来るその言葉に返さず、私は会社へと急いだ。



それはまるで圭の甘い言葉から逃れるように。



この一年はいったいなんだったのか。



離れていた一年などなかったかのような態度の圭。



違う離れていたんじゃない、一年前に終わったはずなのに。
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