大人的恋愛事情
 
いつだって圭の甘えるようなこの声には逆らえなかった。



まあいいか、それくらい……。



いつもそんなことを思いながら、何だかんだで圭のペースだった気がする。



「よくないわよ、いかないから。忙しいから切るわよ」



そう言って電話を切り上げようとすると、圭がさらに甘える声で驚くことを言い出した。



『俺、実は合い鍵まだ持ってんだよな』



はあ?



「え、誰の?」



『繭の』



「どこの?」



『家の。今日の夜にでも行ってもいいなら……』



「お昼に正面玄関で」
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