大人的恋愛事情
「クセがあるんだけど、もう少し聞いていたいって声じゃありません?」
「全然」
キッパリ言い切る私は抱えていた頭を上げ、切り替えて仕事に戻るべくパソコンに向かう。
どうでもいい。
まったくもってどうでもいい。
そもそも私はここに仕事をしに来ているわけで、婚活をしに来ているわけでもなんでもない。
ましてや圭の声がどうであろうとも……。
「もう、なんなんですか? 繭さんってホント冷めてますよ。てか村岡さんの、あの声は高ポイントですね」
そんなことを満足げに言われて、今思い出さなくてもいい事まで思い出す。