大人的恋愛事情
 
「繭、怒るなよ。な?」



甘えた声を出し笑いながら、片手をポケットから出して腕を組んでくる圭。



普通なら女の子がするその仕草を、大の男が恥ずかしげもなくする。



「やめて」



「いいだろ」



「圭っ!」



それを払いながら、漠然とした不安が胸に広がり、苛立ちよりも何故か泣きそうになった。



いつだってこうやって私に簡単に入って来る圭。



でもそれに乗った途端、痛い目を見るのは私。



それがわかっているのに、揺れる自分が情けなくて、悔しくて、どこか懐かしくて……。
< 160 / 630 >

この作品をシェア

pagetop