大人的恋愛事情
 
「待って……ここで?」



慌てる私は、その腕を掴み伺うように聞く。



けれどまったく容赦する気のない男の力に敵うわけなどなく、アッサリと下着まで到達する手。



「泊まれないと困るのは?」



耳元で囁かれる冷たい言葉に、ようやく事態を把握した。



これは見返り。



今日泊めてもらう代わりに、それなりの代償を払えと言われているのだと。



主導権はこの家の藤井祥悟にあるのだから、不利なのは私。



あの日の行為とは意味が違うということなのだ。



ずっと好きだったと言った藤井祥悟が、最初で最後のチャンスだと思い、優しく私を抱きしめた時とは状況が違うと。
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